第20章 ラピッド・サイクリング双極性障害 v2.0
20-1 抗てんかん薬を含めて全ての薬剤が無効なのはなぜか
20-2 ラピッド・サイクリングの経過の本質
20-3 ラピッド・サイクリングの評価と追跡
—–◎ここがポイント◎——————————————
・ラピッド・サイクリング双極性障害とは1年に4回以上のエピソードがあるもの。
・1日や数日の単なる急速な「気分の揺れ」ではない。
・ラピッド・サイクリングの主な症状はうつ病症状である。
・短い軽躁病エピソードが確認されない場合にはラピッド・サイクリングは慢性うつ病と誤診さ
れる可能性がある。
・ラピッド・サイクリング双極性障害、特に双極Ⅰ型では、多くの場合、抗うつ薬を使わないこ
とが重要である。
・気分安定薬は単剤ではどれも無効である。よくある意見に反して、抗てんかん薬はリチウムよ
りも無効であるし、すべてプラセボと同等である。
・ラピッド・サイクリングの診断と経過観察には気分チャートが非常に有効である。
ラピッド・サイクリング双極性障害は気分障害の中でも非常に複雑で混乱した部分である。
よくあるのは、急速な「気分の揺れ」という誤解である。
ラピッド・サイクリングは数分、数時間、数日、数週間の気分の揺れとは別のものである。
ラピッド・サイクリングの定義は、1年に4回以上の気分エピソードがあるもの、である。
こうした気分エピソードの内容は色々であってもよい。たとえばうつ病、軽躁病、躁病でもよい
。
このそれぞれが3ヶ月ずつ続いたとすれば合計で9ヶ月になり、これに軽躁病エピソードが5日の持
続で3回あったとすれば、全体としてラピッド・サイクリングになる。
ラピッド・サイクリングを構成する気分エピソードは、通常は3ヶ月以上程度の長さで、それが1
年のうちに頻繁に起こる。したがって診断のためには、1年の時間枠で検討することになる。
ラピッド・サイクリングの患者は数時間での気分異変性を経験することがあり(ultradian cycling と
呼ばれる)、また数日での気分異変性のこともある(ultrarapid cycling と呼ばれる)。
そうした異変性はそれ自体はラピッド・サイクリングの診断に役立たない。
1年に4回のエピソードを確認することが必要である。
逆に、非ラピッド・サイクリングの人が数日から数週間での気分異変性を経験したとして、その
事の診断的意義や治療時意義については明確ではない。
「気分の揺れ」という言葉で何を意味しているのか明確にしておく必要がある。
話し言葉では、気分の揺れは単に気分がある状態から別の状態に変化することである。
そのような記述は診断的に意味がある場合もない場合もある。
例えば、気分の揺れを記述して、気分の落ち込みが数時間持続して、そのあと大丈夫となった(平
均的な、正常気分)。
また、ある人は数時間落ち込んでいて、そのあとイライラ気分になった。
またある人は落ち込んだあとにやる気になった。
こうしたことは全部気分の揺れであり、それぞれかなり異なる。
軽躁病エピソードが4日以上続く、躁病エピソードが7日以上続くなどは、双極性障害に関連して
見られる。それぞれのエピソードの定義の中に含まれている。
—–キーポイント———————————————
単極性うつ病では、躁病症状なしに、うつ気分から正常気分へ、あるいはイライラ気分へ変化す
ることがある。こうした気分の揺れは躁病や双極性障害と関係がない。
この定義から言えば、もし他のイライラ気分の躁病症状が数日から一週間以上続いたなら、その
気分の揺れは軽躁病または躁病エピソードの一部分である可能性がある。
もし意気揚々気分があって正常気分基線以上に見えるなら、他の躁病症状が見つけることができ
るかもしれない(現在または過去に)。
その場合は双極性障害の診断が可能になる。
しかし強調したいのは、気分の揺れそのものは診断的価値がないし、単極性うつ病でもよく見ら
れることだ。
気分の揺れがあった時には、実際に何が起こっているのか注意深く診察すべきである。気分の揺
れが双極性障害と結論する材料になるというよりは、双極性障害について調べるきっかけになる
。
20-1 抗てんかん薬を含めて全ての薬剤が無効なのはなぜか
ラピッド・サイクリングはリチウムの初期研究から見つかった。
リチウムに反応しない患者がいて、その人たちは1年に4回以上の気分エピソードを反復していた
。
それをラピッド・サイクリングと呼ぶようになった。
この経緯から、ラピッド・サイクリングではリチウムは無効である。
そして多くの医師は、ラピッド・サイクリングでは、他の薬、特にDivalproexのような抗てんかん
薬が、リチウムよりも有効だと信じているようだ。
しかし最近、最初の2剤無作為化比較試験が行われ、Divalproexはリチウム極めて似ていることが
判明した。つまりDivalproexも基本的には無効ということである。
その他の研究ではカルバマゼピンはリチウムとかわりなく、2つの無作為化試験(1つは未出版)では
ラモトリギンはラピッド・サイクリングに対してプラセボと同等である。
—–ヒント———————————————————-
一般に考えられているのとは違って、ラピッド・サイクリングでは抗てんかん薬はリチウム同様
無効である。
ラピッド・サイクリングは全般に治療抵抗性である。
気分安定薬単剤では無効で、気分安定薬の多剤併用が必要である。
【as→at】少なくとも単剤では無効であるが、例外は、抗うつ薬中止である。それを以下に述べる
。
このような具合で、ラピッド・サイクリングでは気分安定薬多剤併用が必要であるが、その時抗
うつ薬は抜くこと、そして医師は非常に忍耐強くあること。
何度も、私の経験では数年にわたり、この治療アプローチは続けられ、徐々に改善し、ときには
完全に回復する。
20-2 ラピッド・サイクリングの経過の本質
ラピッド・サイクリングでは、1年に4回以上の気分エピソードがあり、人生に少なくとも一回の
躁病または軽躁病を経験している。
ある年のすべての気分エピソードがうつ病エピソードでもよいことを思い出して欲しい。
エピソードは躁病または軽躁病である必要はない(しかし通常は少なくとも一度はそのようなエ
ピソードがあるのだが)。
他方、単極性うつ病ではラピッド・サイクリングはまれである。
つまり、患者が躁病エピソードや軽躁病エピソードを一度も経験していないなら、大うつ病エ
ピソードが年に4回、短く別々に起こっているとは考えにくいのだ。
単極性うつ病とラピッド・サイクリングに関係がなさそうなのは、単極性うつ病のうつ病エピソ
ードは未治療で平均で6ヶ月から1年続くという事実が主な理由である。
ラピッド・サイクリングは双極性障害のほうに多く見られるのだが、それはうつ病エピソードよ
りも躁病エピソードが短いからである。
ラピッド・サイクリングは1960年以前には言われたことがなかった。
クレペリンやブロイラーなどは骨身を惜しまず記録する人たちだったが、ラピッド・サイクリン
グのようなことは記載していない。
記載が初めて見られるのは1970年代になってからのことで、DunnerとFieveがリチウムに反応せ
ず1年に4回以上のエピソードを経験する患者が多数いることを記した。
この分類は双極性障害の約20%にあたり、それ以来この所見は多くの研究で確認され、1996年
のDSM-IVではラピッド・サイクリング経過として採用された。
なぜラピッド・サイクリングは1960年以前の精神医学文献にないのだろう、そして見出されて以
来20%で見られているのはなぜだろう。
研究が進んでいなかったからと考えることはできないだろう。
20世紀半ば以前の先達は現在の我々よりも精密な記述者だった。依然として我々は彼らの観察と
記述に多くを頼っている。
1960年に何が起こったのか?
(もちろん正確な年月ではないけれども、およそ1960年ということだ)
この世で何が起こったというのだろうか。
ケネディ大統領の選挙のあたり、アメリカンフットボールリーグがうまれたあたりである。
私の意見では精神薬理学の興隆が要因の一つではないかと思う。
抗うつ薬と抗精神病薬は1960年代と1970年代になって広く使われ始めた。
特に抗うつ薬に関しては、18章で論じたように、双極性障害の約1/4以上でラピッド・サイクリン
グを誘発していると考えられている。
この発生率それ自体がラピッド・サイクリングの発生率なので、これで充分な説明になっている
と思われる。
抗うつ薬とラピッド・サイクリングの関連は1975年にWehrとGoodwinによって最初に報告された
。
そして1979年にWehrと共同研究者によって確認された。
1980年にはKukopulosらによって確認された。
しかしこの臨床的観察の非常な重大性はおおむね認識されずに10年以上がたち、いまでもなお一
部では反対がある。
Wehr、Kukopulosなどによれば、ラピッド・サイクリング治療では、抗うつ薬中止が最も重大な
決断である。
多くの患者では、抗うつ薬中止後にラピッド・サイクリング経過は消えてしまう。
少数ではラピッド・サイクリングが消えないが、過剰な抗うつ薬が永続的なラピッド・サイクリ
ング状態を招いたのだと結論されている。
利用可能な臨床的文献を基礎として、私の経験を加味して、次のような臨床的アプローチが有効
だと私は考えている。
1.ラピッド・サイクリングでは基本的に抗うつ薬は禁忌である。少数の例外はあり(私の経験で
は10%に満たない)、その場合は難治性のうつ病症状に対して抗うつ薬が必要である(時々必要な場
合も、ずっと必要な場合もある)。
2.複数気分安定薬が通常必要である。多くの例では非定型抗精神病薬を含めることが鍵となる。
3.時間縦断的なエピソード評価が非常に有益である。患者の気分チャートを書くこと、エピソード
の頻度を確認することが、治療結果の評価に必要である。ラピッド・サイクリングでは3ヶ月以上
程度で診察をする。うつ病なら2ヶ月以内、躁病では1ヶ月以内である。
4.長期の結果に焦点を当てることが臨床的に成功する鍵である。短期間のうつ病症状や気分の揺れ
に過剰に反応すると長期治療を複雑にするだけである。
20-3 ラピッド・サイクリングの評価と追跡
ラピッド・サイクリングの経過はたいてい複雑なので図示しないことには把握しにくい。患者の
言葉は多くは曖昧で、治療反応を合理的に評価するために操作的な定義に当てはめようとしても
複雑すぎる。
過去の気分症状について質問して返ってくるのは次のような答えである。
かっこの中は私のコメントで、診断的にどう評価するかを示している。
・「気分はあちこちそこら中だよ」(この言葉は曖昧すぎて診断的内容に乏しい)
・「ときどきアップでときどきダウン。規則も理由もない」(ときどきの頻度と持続を確認する
こと。患者は原因やきっかけに焦点を当てているのだが、それはあまり診断的価値がない。臨床
的にはきっかけは有用であるが。診断的に言うと、単一二次性エピソードが除外されたら、エ
ピソードの原因は問題ではない。エピソードの期間中に症状として何が起こっていたのかを言お
うとして単純に原因を言おうとする。しばしば患者は症状を直接に表現せず、原因についての推
察を語ろうとする。)
・「私はずっとうつだった」(ラピッド・サイクリング双極性障害の患者の多くはうつ気分に焦点
を当てる。うつ気分は通常は長く重症なのであるが、生活の一日一日を細かく表現しているので
はない。特に現在うつのとき、気分はどうかと質問されると、患者は自分のうつ症状について過
剰に表現する。さらに質問して医師はこの答えの中身を確かめる必要がある。しばしば患者は短
い軽躁病や躁病エピソードがあったことを語る。患者は1年のうち340日はうつかもしれないが、
それぞれ4日間の軽躁病が3回あってうつは3回中断されたたかもしれない。その場合、患者は双極
性障害であるというだけではなくてラピッド・サイクリング双極性障害と診断できる。一年中の
大うつ病エピソードとは考えないと思う。この鑑別が治療を全く異なるものにする。)
患者はうつを過大に報告し、気分循環については過小に語る傾向があるので、気分チャートが診
断に助けになると多くの医師が考えている。
気分チャートの考えはクレペリンに始まる。彼は患者の病歴要約カードを作り、数十年に渡る気
分エピソードをすべて記録した。
のちにアドルフ・マイヤーはライフ・チャートを作ることの有用性を強調した。病気の経過を追
跡し、症状のきっかけとなるライフイベントに特に注目した。
最近の研究者、特にGabriele Leverich と Robert Post は、これら2つの歴史的源泉を結合し、双極
性障害用にライフチャート法(LCM)を創案した。
特にラピッド・サイクリングに有用だとしている。
LCMでは回顧的に患者の病歴を記録し、未来予測的に経過を追跡できる。
記入は患者がしてもいいし医師がしてもいい。
私の意見では、この方法に意義があることの最大のエビデンスは、未来予測的に医師が記入する
ときに分かる(患者の病識欠如や記憶違いの落とし穴を回避できる)。
病識のある患者では、未来予測的にセルフレポートした気分チャートは医師の役に立つ。
付録に未来予測的日々気分チャートを載せた。それは患者が評価して記入する。Gray Sachsの業
績によるもので私が軽度に改訂した。
付録に医師記入型のLCMと患者記入型の気分チャートを収録した。
双極性障害一般の場合に、特にラピッド・サイクリングで、診断と追跡に役立つ。
—–キーポイント———————————————–
気分チャートのような道具は大切で、ラピッド・サイクリング双極性障害の治療反応を追跡する
役に立つ。
軽度改善を追跡することは難しいが、気分チャートで把握しやすくなる。
さらに、標準の臨床面接では病気の悪化と何か特定の要因が曖昧に不明瞭に関係付けらるが、気
分チャートではもっと明瞭に隠れた関係が明らかになる。
例えば、抗うつ薬使用とラピッド・サイクリングの悪化との関係は気分チャートでもっと明らか
になる。
そうしたことは標準の臨床面接では追跡も正確な再構成も困難である。
困ったことに、患者の病状が悪い時、たとえば重症のうつ病エピソードの時やラピッド・サイク
リングのときなどには、セルフレポートの気分チャートを書くことが億劫であるし不可能である
。
この要因を考えると医師が記入する気分チャートがますます大切になる。
LCMは患者に適した指示を出すこともできるし臨床面接の一部分として使うこともできる。特に
ラピッド・サイクリング双極性障害で有効である。
次に教育的ケースで、これらの方法を応用し、われわれのルールを使って、ラピッド・サイクリ
ングを治療する方法を見ていこう。
—–症例スケッチ————————————
34歳、白人女性。主訴は「私はいつもうつです」。多くの抗うつ薬に無反応、一部薬剤には一次
的に反応したがまたうつに戻った。
フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、ベンラファキシンを使用した。
フルオキセチンが一番良かったが、6ヶ月で元に戻ってしまった。三度試して三度とも一時的な反
応があった。
あるとき医師は双極性障害の可能性を考え、彼女はリチウムを3ヶ月服用し、自覚できるような利
益はなかった。
体重増加と記憶障害が出て彼女は服薬中止を欲した。また、バルプロ酸は治療2ヶ月で利益なく、
抗うつ薬を再開した。
この種の患者では、軽躁病への短期間の気分の揺れがないか注意深く評価すべきだ。
うつを主訴とし彼女自身も主にうつを経験しているのだが、単極性うつ病なのか双極性うつ病な
のかを決定するために彼女が躁病あるいは軽躁病を経験したことがないか知ることが鍵である。
さらに、ラピッド・サイクリングかどうかを決定するために知らなければならないのは、うつ病
エピソードまたは躁病エピソードの頻度である。
患者の現在の気分状態を知るだけでは不充分であるし、患者の病歴を表面的に知るだけでも足り
ない。
表20.1にあげた質問への答えを知ることが肝心である。
多くのケースでは、患者と友人や家族はそのような情報をもたらさない。
しかしこれがあるからといって情報を得る努力から免除されるわけではない。
この患者の場合に、得られた生活史を図示すると図20.1になる。
—-表20.1 ラピッド・サイクリング双極性障害を適切に評価するために医師が答えなければなら
ない質問—————
1.最初の大うつ病エピソードが始まった年齢は?
2.最初の躁病または軽躁病エピソードが始まった年齢は?
3.大うつ病エピソードは何回起こったか?いつか?
4.躁病または軽躁病エピソードは何回起こったか?いつか?
5.最後の大うつ病エピソードはいつか?もっとも長かったエピソードはどれか?【they will last】
6.大うつ病エピソードは典型的にはどのくらい持続するか?
7.最後の躁病または軽躁病エピソードはいつか?
8.躁病または軽躁病エピソードは典型的にはどのくらい持続するか?もっとも長かったエピソード
はどれか?
9.去年は気分エピソードが何回起こったか?
10.気分エピソードの時期に関係する薬剤を評価する。抗うつ薬使用期間に気分エピソードは増加
したか?
11.気分エピソードの時期に関係する物質乱用を評価する。物質乱用期間に気分エピソードは増加
したか?
—–図20.1————————————————————————————–
双極性障害の患者の全人生にわたる気分エピソードを図示することがしばしば有用である。
こうした要約は、一次元のみであるが、人生の現実の概略であり、言葉で把握するのは難しい視
覚的な情報である。
薬剤使用の時期をおよそ描いておけば全体の治療を概観できるし、特に重要な点である治療の重
なりも把握できる。
(すなわち、気分安定薬が常に抗うつ薬と一緒に使われていたら、抗うつ薬なしの時よりも効果は
薄いだろう。)
この図を作ってラピッド・サイクリングが抗うつ剤使用と同時に悪化しているとすれば理解が進
むだろう。
図にしないでこうした判断をくだすのは難しいし、面接者としては、連続的な患者の歴史を把握
するのは難しいだろう。
この症例の場合には、私の最初の判断は抗うつ剤を中止することである。
この患者の場合、抗うつ薬が充分に効果的でないことは明白である。
さらに、治療開始して以後、抗うつ薬を使わないでいた期間はないのである。
彼女のラピッド・サイクリングは抗うつ薬使用に誘発されたものだろう。
確かめる方法は抗うつ薬を中止してみることである。
確かめる方法は抗うつ薬を中止してみることである。
現在うつであれば、現在の無効な抗うつ薬治療を中止することに進んで同意するのではないか。
さらに、この患者が私に意見を求めた時の病歴としては、複数の抗うつ薬でもリチウムやバルプ
ロ酸でも、治療抵抗性であるとのことだった。
私にとって最初に印象的な点は、彼女は気分安定薬単剤治療の公正なトライアルをしていないこ
とだった。
彼女は常に抗うつ薬を使用していて、それが彼女の気分を不安定化していて、気分安定薬から得
られるかもしれない利益を打ち消してしまっていたのではないか。
そこで、抗うつ薬を中止して、私はリチウム単剤かバルプロ酸単剤での再度のトライアルを勧
めた。
彼女はリチウムによるニキビを嫌って、バルプロ酸を希望した。
バルプロ酸(1000㎎眠前、血中濃度75ng/dL)を1ヶ月服用しうつ病症状には中等度に利益があった
。
いくらかの鎮静を感じたがそれは解決された。
体重は3ポンド増加した(0.45 3=1.35Kg)。
彼女は自分のうつはあまりに問題がありすぎてこのまま長くは待てないと感じた。
そこで我々は別の介入を決断した。
この時点で19章に示したアルゴリズムを確認して、バルプロ酸とリチウムを併用するか、バルプ
ロ酸に非定型抗精神病薬を上乗せするかを考えた。
彼女は非定型抗精神病薬を選択し、体重増加の少ないものを希望した。バルプロ酸ですでに体重
が増えていた。
私はリスペリドンかジプラシドンはどうかと提案し、彼女は心臓リスクを回避したいのでリスペ
リドンを選択した。
我々はリスペリドンを上乗せして0.5㎎眠前とした。
(私はラピッド・サイクリングの女性に対して副作用リスクを最小化するために極めて少量で開始
する。)
次に1週間後に1㎎眠前として、2週間待った。
彼女は中等度改善を報告した。しかし1.5㎎眠前はあまりに鎮静的だった。
再度1㎎眠前に戻し利益があった。
最終的にはバルプロ酸とリスペリドンを維持して長期利益があった。
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