第6章 遺伝と環境 v2.0


第6章 遺伝と環境 v2.0
6-1 遺伝
6-2 行動遺伝学
6-3 家族研究
6-4 環境
6-5 遺伝子型-環境相互作用
—–◎ここがポイント◎——————–
・双極性障害では遺伝要因と環境要因がほぼ同じ程度である。
・遺伝要因はメンデル型ではなく多遺伝子関与型で、疾病脆弱性が遺伝する。

・環境要因はいくつかの特異的ライフイベントのことで、気分エピソードのきっかけになる。

ここでは気分障害の原因を論じ、二つの大きなカテゴリーである遺伝と環境を考える。
6-1 遺伝
多年にわたる探求は失敗してきたのであるが、気分障害(あるいは精神病)の原因となる単一遺伝子
または数個の遺伝子は発見されていない。
多くの精神科疾患は古典的メンデル型遺伝形式の疾患ではないのだろう。
メンデル型遺伝では、質的変化が多くは単一遺伝子変化によって生じる。
従って、遺伝子が優性ならば、その形質を発現する。
もし遺伝子が劣性ならば、ホモ接合的様式(二つの劣性遺伝子が一緒になった場合)でその形質が発
現する。
その頻度は計算できる。
このタイプの遺伝形式は、環境がほとんど関与しないまたは全く関与しない遺伝病を説明する。
しかし多くのよく見られる慢性疾患はこの遺伝形式に従わない。
たとえば、
高血圧症や糖尿病(Ⅱ型)は遺伝要素があるものの、頻度としては常染色体優性でもなく劣勢でも
ない。
同様に、身長、体重、知能などの正常形質も遺伝するが、常染色体遺伝ではない。
慢性疾患や正常形質に関しては、こうした形質の脆弱性または特質への傾向が遺伝する。
この種の遺伝子による影響は質的ではなく量的である。
単一遺伝子の影響は相対的に少なく、疾患や特質は小さな影響を生む多数の遺伝子の積み重ねの
結果である。
そのような遺伝形式は多くの精神疾患にも当てはまる。
精神科疾患の遺伝子研究は多くは量的研究であり、統計分析が基礎である。
質的研究では染色体分析や遺伝子座マッピングが用いられる。
質的遺伝子研究は数多いものの、今日に至るまで見事に不成功である。
他方、量的遺伝子研究法はかなり成功していて、精神科疾患の遺伝についての基礎的知識を進歩
させた。
—–ヒント———————————————-
多くの精神科疾患の遺伝形式は、少数の大遺伝子効果ではなく、多数の少遺伝子の効果である。

また環境も精神科疾患の原因の重要部分である。

6-2 行動遺伝学
行動遺伝学の分野ではおおむね量的遺伝学研究が行われている。
メンデルが質的遺伝学の父とすれば、量的遺伝学の父はフランシス・ガルトンである。
ガルトンはチャールズ・ダーウィンのいとこであり、この有名な親戚に強く影響された。
ガルトンは知能に興味を持ち、知的活動(科学、学問、法律)の成功が家系の中で受け継がれると考
えた。
彼は遺伝を研究するためのいろいろな数学的手法を工夫した。
これらの手法は後の人により洗練されて現在広く使われている。
量的遺伝学の中で最も一般に知られているのはおそらく双子研究だろう。
一卵性双生児はすべての遺伝子を共有している。
二卵性双生児は遺伝子の半分を共有している。
もう一つ、そうした双子は環境が似ている。
同い年で、同じ子宮で育ち、同じ家族に育てられる。
双子は理想的な「自然実験」であり、遺伝と環境の影響を区別できる。
原因が完全に遺伝的ならば一卵性双生児は全く同じ病気になるし、二卵性双生児は半分だけ同じ
になる。
一卵性双生児で病気の共有が100%に満たないならば、原因は完全には遺伝的ではないことになる
。残りの原因は環境に違いないだろう。
複雑な数学モデルで、遺伝学者は双子についてのある病気の現実の有病率を見て、病気の遺伝関
与率を決定する。
それはその病気について遺伝子のみが関与する度合いを示している。
さらに、同様の数学モデルを用いて、遺伝学者は残りの環境因子を評価し、その環境因子は双子
に共有なのか(家族に共通の環境またはさらに広く文化に共通の環境)、あるいはある双子の一方に
固有で他方は持っていないものなのか(「暴虐な運命の矢弾」ハムレット)を決定する。
大うつ病に関して多数の双子研究が発表されている。5つの双子研究についての最近のメタ分析で
は大うつ病の平均遺伝関与率は37%(31-42%のレンジ)である。
さらに、病気の残りの部分である環境関与率(63%、58-67%のレンジ)の中の、共有部分は無視出
来る程度であることが明らかである。
環境因子のほとんど全ては双子に共有されない、片方に固有の因子である。こうした環境因子に
ついてここでさらに論じる。
—–ヒント————————————————–
大うつ病に関しての遺伝的脆弱性は病気のリスクの37%を説明する。リスクの大部分は片方に固

有の環境因子であり、明らかに、家庭環境のような双子に共有の環境因子ではない。

うつ病の遺伝形式は質的ではなく量的であり、遺伝関与率が37%であるとは、実際は何を意味し
ているのだろうか?
(第一の結論) 気分障害の原因としては、遺伝因子よりも環境因子が大きい。
気分障害は単なる遺伝病ではない。
(第二の結論) 大うつ病の遺伝形式は疾患脆弱性の遺伝であり、それは他の因子(多くは環境因子)
が加わることで発病する。
(これらの結論はアドルフ・マイヤーがずっと以前に示したもので、彼は精神科疾患の遺伝関与率
が小さいと考えた。そして心理社会的環境への適応と予防を唱えた。)
このようにして、大うつ病ではストレス-素因モデルが適用できる(図6.1)。
双極性障害の治療が原因にどのように作用するかを理解するには、生物学的治療(たとえば薬物)は
遺伝的素質に作用し、精神療法(あるいは他の心理社会的作用)は反復する環境ストレスに作用する
と考えることだろう。
—–図6.1 精神科疾患のストレス-素因モデル—-

伏在する疾病脆弱性 観察される病気

—–ヒント————————————————-

単純化すると、薬剤は遺伝的素因に効き、精神療法は環境ストレスに効く。

6-3 家族研究
遺伝研究のもう一つのタイプは、家族研究である。
発端者が精神科疾患であると診断され、その家族が精神科疾患に関して診断を受ける。
第一度近親者(つまり、親、兄弟、子供)は発端者と遺伝子の50%を共有している。
近親度が遠くなるに連れて、共有遺伝子は1/2ずつ減少する。
複数の少遺伝子がランダムに遺伝すると考えると、気分障害のリスクも同様に同じ倍率で低下
する。
最近のメタ分析の対象となったのが5つの家族研究で、その中で、うつ病発端者の第一度近親者に
大うつ病が起こる割合は平均で2.8%であった(一般人口に比較して約3倍のリスク増加を意味して
いる)。
—–ヒント———————————————–

うつ病患者の第一近親者は一般人口の3倍の大うつ病発症リスクがある。

これらの研究を基礎として、我々はもうすぐ患者と家族に意味のある遺伝子カウンセリングがで
きるようになる。少なくとも自分や子孫にその病気が発症する確率を示された時よく納得して方
針を選択できるようにする。
我々が根拠としているのはこの文献の最近のレビューであり、その中で、様々な出版された厳格
な遺伝研究の分析に基づいて、リスクの加重平均が算出される。第一度近親者のリスクは表6.1で
ある。
—–表6.1気分障害患者の家族の遺伝的リスクの割合——
患者の診断 BPの家族リスク UPの家族リスク
BP 7% 13%

UP 2% 14%

・もし患者が双極性スペクトラム障害(双極Ⅰ型、双極Ⅱ型、統合失調感情障害)なら、第一度近親
者がなんらかの気分障害になる生涯リスクは20%である。
・もし患者が双極性障害なら、第一度近親者が生涯で双極性障害を発症するリスクは6.7%、単極
性うつ病を発症するリスクは12.5%。
・もし患者が単極性うつ病なら、第一度近親者の生涯双極性障害発症リスクは1.9%、単極性うつ
病発症リスクは14.2%。
—–表6.2気分障害患者の家族の遺伝的リスクの割合:オッズ比——
患者の診断 BPの家族リスク UPの家族リスク
BP 8-10 2-3

UP 1.5-2 3-4

一般人口を比較対象群とした場合のリスク率のレンジで言えば、双極性障害の人の第一度近親
者は、双極性障害発症リスクが8-10倍、単極性うつ病発症リスクは3-4倍。
単極性うつ病の人の第一度近親者の双極性障害発症リスクは1-1.5倍、単極性うつ病発症リスク
が3-4倍(表6.2)。
こうしたリスク評価の基礎は単系系譜の仮説に基づいている。それは家系の片方からのみ気分障
害が遺伝する仮説である。
精神科疾患の遺伝的要因は加算的であり、二家系系譜仮説を採用すればリスク評価は倍になる。
精神科疾患の場合は両方の家系の遺伝子が加算的に関係しているはずである。
同じ理由で、我々はこれらのリスク要因を第二度近親者について半分として評価する。
第二度近親者や第三度近親者のリスクの正確な数値は確立されていない。
さらに、これら家族研究は、単極性うつ病の患者の家族で一般よりも双極性障害のリスクが高く
なると報告しているが、双子研究は双極性障害を持つ患者の家族よりも、単極性うつ病を持つ患
者の家族で双極性障害の血縁は相対的に少ないと結論されている。
しかしこれらを比較した場合の差異は絶対的ではなく、例外的なものかもしれない。
うつ病患者でわずかな、あるいは認識できない程度の躁病症状を呈する場合、双極性障害を疑う
重要な手がかりはしばしば双極性障害の血縁がいることである。
双極性障害の家族歴を持つうつ病患者は単極性うつ病というよりは多彩な双極性障害症状を呈す
る傾向がある。
—–ヒント————————————————
単極性うつ病患者の家族に双極性障害は普通はない。血縁が双極性障害だったら、その患者は双

極性障害の可能性が高い。

—–症例スケッチ—————————————
マルシアは36歳既婚女性で14歳と12歳の二人の子供がいる。3人目の子供はどうか助言を求めて電
話してきた。というのは、彼女の姉妹が最近、双極性障害と診断されたからである。思い返して
みると、マルシアの大叔母は1950年代に「統合失調症」で入院していたが、躁状態と思われる症
状を呈していたようだ。マルシアの子供のどちらもまだ気分障害のエビデンスを示してはいない
。マルシアの夫と夫の家族には知る限りでは気分障害や精神科疾患のリスクはない。この病歴に
基づいて、コンサルタントはマルシアに第1度近親者が双極性障害(Ⅰ型)になる確率は約7%で
あると伝えた。さらに、遺伝的リスクは加算的であり、世代が下るたびに確率は半分に減ると伝
えた。叔母は第2度近親者なので、マルシアの子どもへのリスクは3%である。このリスクはどの
子どもに対しても同じであり、たとえ先に生まれた子が症状がなくても、後から生まれる子のリ
スクは増えない。さらに、双極性障害の発病年齢は19歳位のことが多いので、彼女の二人の思春
期の子どもに将来、症状が出るかどうかはわからない。コンサルタントはもしも妊娠したら、妊
娠中と周産期の健康によく注意して気分障害の原因になる環境からのリスクを減らすように彼女

にアドバイスした。環境要因は遺伝要因と同程度の影響がある。

6-4 環境
もし大うつ病の遺伝関与率が37%ならば、大うつ病の要因の大部分は環境である。しかしどんな
環境が影響しているのだろう?
双子研究では環境因子は共有されないことが知られている。
共有された家族環境体験はあまり重要ではないようだ。
これはどういう意味だろう?
以前支持されていた学説は母親機能不全であったり、人生初期の全般に混乱した家庭なのだが、
そうした学説は今は、他の多くの学説と同じく妥当だと考えられていない。
学説を反証することは難しいことが多いが、矛盾があれば疑いは大きくなる。
私がここで言及する理論の多くは精神分析学に起源があり、私の考えでは、双子研究の全般の傾
向は精神分析学を基礎とする諸説が矛盾していることを示しているようである。
大うつ病になりやすい体質を作る因子として、共有の家庭環境はあまり大きな役割は果たしてい
ないようだ。
母親がひとりの子供を他の子供と同じくらい不適切に育てたとして、のちにうつ病を発症するこ
とは関係ないようである。二人ともうつ病になるわけではない。
しかしもし母親がひとりの子供を他の子供と違うように扱ったらどうなるだろうか?
その場合は共有環境ではなくて、非共有環境の影響であり、双子研究が指摘しているような種類
の環境体験はうつ病になりやすい体質に大きな影響を与える。
出生順位はそのような影響の中でも大きなものである。
第一子の経験は第七子の経験とはかなり違う。
心理学的文献全般がおおむね主張しているように、第一子は親と強く同一化し、後に生まれた子
供よりも直接の親の注意(助けであることもあり、そうでないこともある)を引くことが多い。
第一子は職業や収入の面で世間的な意味で「成功」する傾向がある。
後に生まれた子供は創造的であったり親とは違う新しい人生プランを生きたりする。
第一子は政治的にも社交的にも保守的である。後に生まれた子供はより革新的である。
こうした人格傾向は子供時代の異なった家族経験に影響されている。それは部分的には家族内の
子供の数や出生順に原因がある。
うつ病になりやすい傾向はこのような環境に影響されることがある。
たとえば、第一子は親から背負わされた過剰な責任感のせいでうつ病になるかもしれない。
またおそらく世間的な成功を過剰に要求されたり期待されたりしてうつ病になるかもしれない。
後に生まれた子供は概して親が忙しいからと無視されてうつ病になるかもしれない。
また先に生まれた子供よりもかわいがられない感じがしてうつ病になるかもしれない。
こうした経験が自動的にうつ病に結びつくものではないことを確認しよう。
多くの人はそのような経験をしてもうつ病にならない。
環境的な要因と遺伝的なうつ病になりやすさの素質とが一緒になったとき、うつ病になるのだ
ろう。
—–ヒント—————————————————–

出生順はうつ病に関わる重要な環境因子である。

強調しておきたいのだが、双子研究は出生順序がうつ病の原因の一部であるという点では一致し
ているが、それが原因だと証明しているわけではない。
しかし、共有された家族環境とは違い、双子研究が出生順位説と不一致なわけではない。
非共有の環境因子としては他にはどんなものがあるだろうか?
おそらく次に大きな環境因子は仲間関係だろう。
子供は一つの友人グループを作っていて、兄弟姉妹は別のグループを作っている。
仲間関係は非共有の環境因子である。
一部の心理学者はそれまでに要約した双子研究からの結論として、人格発達または精神科疾患の
観点から仲間関係は最も重要な幼児期体験であるとしている。
かつての遠くない精神分析時代には、母親機能不全がすべての精神科疾患の原因であると言われ
たものだが、今度はその逆に振り子が振れているようである。
仲間関係は重要であるが、双極性障害の原因(さらには人格傾向の原因)として家族体験の替わりに
仲間関係を考えるとしたら間違いだろう。
遺伝研究は配偶者や家族を慎重に選べと言うだけでなく、友人を慎重に選べと言っている。
仲間との苦痛な体験があると自己評価が低くなるし、学業に集中できなくなり、社交も学業もう
まくいかなくなり、アルコールや物質乱用になったりする。
こうした仲間からの影響は、全般にうつ病になりやすい素質のある人がうつ病になるリスクを高
くするだろう。
逆に、肯定的仲間体験は、自己評価を高め、社交で認められ、うつ病発症の危険を減らす可能性
がある。
—–ヒント———————————————–

仲間関係はうつ病に関する重要な環境因子である。友人は注意深く選ばなければならない。

私の経験では、人間のコントロールを超えたライフイベントはおそらくうつ病を準備する非共有
環境体験の最大要素だろう。
偶然は人生にいろいろな影響を与える。
行動遺伝学者リンドン・エバンズはこうした非共有の環境因子を説明してシェイクスピアの句を
よく引用する「暴虐な運命の矢弾」。
ある種のライフイベントは多くの人に共有されている。恋愛の破綻、離婚、親兄弟の死、結婚式
、子供の誕生、病気、仕事の成功、失業、上司や同僚とのいさかい。
我々の多くは少なくともこれらの典型的なライフイベントのいくつかを経験しているだろう。
しかしこれらイベントは、人生のいつ起こるのか、どのように起こるのかの両方の点で、個人
にとって特有のものである(時に不安が強く時に弱い)。
遺伝的素因があり、同時におそらく環境的素因のある人は、大うつ病エピソードが実際に起こる
だろう。
通常はこうしたライフイベントはうつ病エピソードの引き金である。
通常、それらは原因的なのであるが、早期子供時代の体験や遺伝的なりやすさとは別の意味で
ある。
これらの環境的な引き金は大うつ病に充分であるが必要ではない。
多くの人で環境的引き金は原因的循環を完結させるが、うつ病になりやすい人はこうした特異的
なライフイベントがなくてもうつ病エピソードを体験することがしばしばである。
他方で、多くの人にとって遺伝的因子と早期環境的因子(たぶん出生順位と仲間関係)は発病に必要
だが充分ではない。
このような素因がある人の場合には暴虐な運命の矢弾が最終の引き金となってうつ病が起こるの
だろう。
次章で論じるキンドリングモデルはこれら多くの考えを統合するものである。
【キンドリングはてんかんでよく言われる話】
—–ヒント——————————————————
「暴虐な運命の矢弾」とは予言不可能なライフイベントで、気分エピソードの引き金となる。そ

れは大うつ病の発生にときに充分であるが必ずしも必要ではない。

子供時代に親を失うとか性的虐待や虐待などのような大きなトラウマについてはどうだろうか。
精神分析から派生した理論はそのような大きなトラウマを種々の精神科疾患の中核に置いている

大きなトラウマは気分障害の原因なのだろうか?
そのようなトラウマが非共有環境体験である限り、行動遺伝学の文献の現状に矛盾しない。
この問題については直接の、よくデザインされた実証研究がほとんどない。
ある研究によれば、子供時代の親喪失が大うつ病などの成人になってからの精神病理に関係す
るが、しかしその程度は小さい(成人で診断された病気の原因の約5%を説明する)。
そのようなトラウマが重要な環境因子となり、全般にうつ病なりやすい素因のある人をうつ病に
すると考えるのは論理的だろう。
そのようなタイプのトラウマが充分に重症であれば、そのトラウマは大うつ病の発症リスクを増
大させる。極めて限定された遺伝的素因を持つ人であったとしても、そのように言えるだろう。
—–ヒント————————————————-
虐待や性的虐待のような重篤なトラウマは気分障害の環境要因の重大部分となる。しかしそうい

ったトラウマは気分障害の原因の中心ではないし必要条件でもない。

6-5 遺伝子型-環境相互作用
何の過失がなくてもシェイクスピアのいう矢弾が飛んできて「偶然」が人を襲うが、一方で、人
はある種のライフイベントを自分の意志で決定できる。
たとえば、近所の犯罪多発地域に足を踏み入れれば、その地域を回避したときよりは、強盗被害
の確率は大きくなる。
これは意識的決断の例であるが、遺伝子型-環境相互作用と呼ばれる概念では、もっと大規模で複
雑な生物学的相互作用を示すことができる。
最近の大規模な児童発達の双子研究で、児童に対する環境作用に関心のある精神科医が取り組み
、児童期から青年期まで追跡したところ、驚いたことに、遺伝が非常に重要であることが証明さ
れた。
子供は自分の持って生まれた気質を元にしてある種の環境体験をしているらしい。
こうした気質は両親から異なった相互作用を引き出し、子供時代を通じての異なった発達が生じ
ることになる。
このタイプの遺伝子型-環境相互作用はまた、非共有環境要因をもたらし、同じ家庭で育てられて
も同胞間での違いをもたらす。

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