第1章 気分障害の診断と記述 v2.0
第1章 気分障害の診断と記述 (v2.0)
1-1 気分障害はなぜ重要か:精神医学の診断階層表
1-2 気分障害についての歴史的考察
1-3 双極性と単極性うつ病の鑑別
1-4 気分障害の下位分類のさまざま
1-4-1 たくさんの下位分類のひとつ(表1.3)
1-4-2 単極性うつ病の下位分類(表1.4)
1-4-3 双極性障害の下位分類(表1.5)
1-5 うつ病と躁病を定義する
1-5-1 大うつ病を診断する
1-5-2 躁病を診断する
——◎ここがポイント◎———————————
・うつ病には双極性と単極性の二つがある
・単極性うつ病には躁状態も軽躁状態もない
・躁状態または軽躁状態があるときは双極性スペクトラムである
・うつ状態の症状を思い出すときはSIG E CAPS
・躁状態の症状を思い出すときはDIGFAST
1-1 気分障害はなぜ重要か:精神医学の診断階層表
現代精神医学の診断では気分障害が中心にある。それを表現すると診断階層表になる。ヨーロッ
パ精神医学の伝統に由来するものであるが、この階層表に従い、上位の診断が否定されない限り
、下位の診断は下されない。表を見れば分かるように最上位に気分障害があので、気分障害が否
定されない限り、その他の診断は下されない(表1.1)。
たとえば、幻聴は精神病症状であり、典型的にはシゾフレニーの時にみられるが、表に従えば、
幻聴がある場合でも、気分障害が除外されないうちはシゾフレニーと診断することは出来ない。
(例えば、精神病性単極性うつ病のせいで幻聴が聞こえているのではないときのみ、シゾフレニ
ーであると診断できる。)
同様に、境界性パーソナリティ障害と見えたとしても、気分障害が否定された場合、または気分
障害があったとしても躁やうつのエピソードの時期ではなく正常気分である場合にのみ、境界
性パーソナリティ障害と診断できる。
またADHD(注意欠陥多動性障害)の場合も同様である。現在症状を呈している気分障害があるな
らば、ADHDと診断することはできない。
いいかえれば、気分障害はそれ自体の気分の症状の他に、ほとんどどんな精神病性の症状も呈す
ることが可能なのである。幻聴や不安などの症状があるときには、気分の変動は見逃されやすい
。気分の症状が前景にある患者ではもちろんだが、そうでない場合にも、まず第一に気分障害の
可能性を検討すべきである。
—–表1.1 精神医学診断階層表———-
1.気分障害
2.精神病性障害
3.不安性障害
4.人格障害
5.その他(例えば、摂食障害、転換性障害【身体表現性障害】、解離性障害、性同一性障害など)
(注)上から順に診断する。上位の病気があったら下位の病気は診断しない。
1-2 気分障害についての歴史的考察
気分障害を理解する方法としてもっとも分かりやすいのは、気分障害の本質はうつ病であると考
えることである。誰でも悲しい気分を経験するのだから、うつ病はその延長にあるとまず理解し
よう。しかしその上で、症状としてのうつ病症状は、やや日常体験とは不連続な位置にあるとい
うことも、すこし訓練すれば理解できるようになる。
気分障害はうつ状態を中心とする症候群であるが臨床症状の現れ方は様々である。
うつ病には主なタイプが二つあり、単極性障害と双極性障害がある。
単極性障害ではうつ状態と正常気分の時期がある。
双極性障害では正常気分よりも高揚した多幸気分の時期があり、自己評価が膨張したりなど、過
剰な部分が発生する。
これが気分障害の最も簡単な分類であるが、この区別にさえ議論がある。事実、100年前、Emil
Kraepelin が主張した当時の主流派の見解によれば、気分障害は二つの部分から成り立っているの
ではなく一つのもので、スペクトラム(連続体)である。Kraepelinは全体をMDI(躁うつ病)と
呼び、うつ状態だけのものは単極性障害、躁状態を伴うものを双極性障害と呼んだ。一方、現在
用いられている単極性と双極性の用語は1960年代になって一般化したものであり、1980年
にDSM-IIIが発表されてからよく知られるようになった。
Kraepelinの躁うつ病と現代の単極性障害・双極性障害がどう違うか理解するにはまず第一に、躁
うつ病をEugen Bleulerが感情障害と呼び変えたことを理解しよう。第二に感情障害にはどのよう
な下位分類があるかを見て診断基準を検証しよう。
「診断基準の検証」は精神医学では重要な概念である。他の医学専門領域に比較して精神科医
は「客観基準」を持たない。たとえば血液検査、X線、ラボ値など、診断の確実さを決定的に確立
するものがない。「客観基準」がないので、研究者は長年工夫して診断基準の妥当性を検証す
るチェック項目を開発した。精神科医は診断基準に従って初診時や治療初期に診断するが、それ
がどの程度妥当であるかをこの「妥当性検証チェック項目」によって検証するのである。1960年
代に用いられていた検証項目は表1.2である。
—–表1.2 精神科診断妥当性検証チェック項目————-
1.症状
2.経過(初発年齢、自然経過)
3.治療に対する反応
- 4.遺伝歴
- した。診断は再発性単極性うつ病。
- そのような期間は2年前が最後だった。医師は双極Ⅱ型と診断した。
- は双極Ⅰ型。
- ある。それに従って治療も異なる。
- 原発性単極性うつ病になる。原発性単極性うつ病には再発性と非再発性がある。
- つ病とは診断しない。その要因は背景であり状況であり、きっかけである。
- たは軽躁状態を見逃さずに診断することが必要である。
- 4.メランコリー型
- 状態になることがある。
- 2.大うつ病性障害(反復性、単一エピソード、慢性)
- 6.急速循環型 1年に4回以上のエピソード
- 、ばか騒ぎ、性的軽率、無謀な運転、衝動的な旅など。軽躁状態では見られない。
- ・発揚性性格(エピソードとエピソードの中間時期)
- うか入念に調べなければならない。
- ような時期があることを確認し、その期間内に他の躁病症状がなかったか確認する。
- 躁病である。
- 定義から、入院は顕著な機能障害である。従って軽躁状態で入院するということはあり得ない。
- 顕著な社会的・職業的機能不全」があれば十分である。
- この診断階層表はこれまではこんな風でした ブロイラーとかシュナイダーの流儀
- 6.その他、性格障害など
4.遺伝歴
何十年か前は治療に対する反応からはほとんど何もエビデンスが得られなかったので、研究者は
病気の経過と遺伝歴に着目した。このふたつが、それまであった伝統的な他覚症状や自覚症状に
よる診断にまさる、独立した検証項目であると考えたのである。もし経過と遺伝歴のふたつによ
って独立疾患としての妥当性が検証されたならば、双極性と単極性は別の疾患と考えられる。
遺伝歴・・・双極性障害患者は双極性障害または単極性障害の遺伝歴があり、単極性障害患者は
双極性障害の遺伝歴がない傾向にあった。
経過・・・双極性障害は例外なく再発性であり、単極性障害は約半分で再発が見られず、一度か
二度のエピソードがあったのみであった。
こうした臨床経験から考えると気分障害は単極性障害と双極性障害のふたつに分けられると考え
るのが妥当である。しかし研究が進めば別の説が有力になることもあるだろう。
一方、Kraepelinのいう躁うつ病を一体と考える見解は今なおメリットがあると考える人もいて、
このことに関しては後述する。
1-3 双極性と単極性うつ病の鑑別
現代の精神医学では気分障害は単極性か双極性かのどちらかである。違いは躁状態/軽躁状態が
あるかどうかである。うつ状態がないことは稀であり、単極性の場合にも双極性の場合にも共通
する症状である。
—–症例スケッチ————
患者は子供の頃から何かしら悲しく感じていた。初めて診断され治療されたのは30歳の時で、そ
れは離婚してすぐのときのことだった。
気分が憂うつになり、何事にも興味がなくなった、体重は20ポンド(0.45 20=9Kg)増え、時間の
大部分、疲れはてていた。
人生は生きるに値しないと考えたが、自分を傷つけることは真剣には考えなかった。
彼女とその母親を注意深く診察して質問したところでは、躁病エピソードも軽躁病エピソードも
一度もないようだった。セルトラリンに急速に反応し、1年後に中止した。3年間はうまくいって
いた。しかし仕事を解雇されたあとに抑うつ的になった。セルトラリンを再開して回復した。2
年後、彼女は最終的に薬剤を中止した。ストレス要因不明のまま42歳でもう一度うつ病を経験
した。診断は再発性単極性うつ病。
—–症例スケッチ—————
34歳白人男性、ここ一年、毎日続く抑うつ気分があり重症のうつ病だった。
活力低下、興味減退、食欲減退、間欠的に自殺念慮。
自発的に初めての精神科診察に訪れた。
(この時点で、我々が知っていたのは、彼が現在大うつ病状態にあることだけだった。我々は単極
性か双極性かは知らなかった。)
質問したところ、精神疾患の家族歴を否定した。
また彼は問題になるような過活動(躁病)の時期もないと言ったが、さらに質問すると、彼は何回か
平均よりも快調な気分を感じたことがあり、それは長いと3-4日続き、活力が増大し、睡眠は短く
てよくなり、おしゃべりになり、学校や仕事で活動が増えた(軽躁病にあてはまる)。
そのような期間は2年前が最後だった。医師は双極Ⅱ型と診断した。
—–症例スケッチ—————-
患者は19歳で大学に入学してひどく抑うつ的になった後、うつ病と診断されて治療された。フル
オキセチンで治療されてすぐに回復し、6カ月後に薬を中止した。1年後、彼は別のうつ病を経
験し、4週間続いて、自然に治った。ガールフレンドと別れたことがストレスになったようだった
。彼はそれを否定した。ガールフレンドによればそれから彼は1ヶ月活力増大していて、睡眠は減
少し、イライラし、活動が増え、友人とのいざこざが増えた。その月の学業はうまくいかなくな
ったが、それは彼が勉強しなくても試験に合格すると思ったからだ。その期間は非常におしゃべ
りだった。その後、再び2ヶ月間の顕著なうつ病になった。これにはリチウムだけが効いた。診断
は双極Ⅰ型。
うつ病と双極性障害が別のものであるかのように考えるのはよくある間違いである。双極性障害
は躁状態を意味していて、それはうつ病とは対照的だと思われているのも間違いである。私の考
えではすべての気分障害はうつ病であり、双極性と単極性のバリエーションがある。したがって
、うつ病を呈しているときには、忘れずに双極性かどうかを検討しないといけない。
さらに大きな間違いがある。強調しておきたいが、うつ病は診断名ではない。うつ病は診断学的
には意味が無い。「誰かがうつ病である」という場合、その人はうつ病症候群の徴候や症状をい
くつも呈しているということにすぎない。これは診断ではない。内科で言えば熱があって寒気が
すると言うに近い。そうした症状を集めても診断にはならない。内科医は病気を調べてどんな種
類の診断が熱や寒気を引き起こしているのかを決定する。同様に、「気分障害の誰かがうつ病で
ある」といえば同義語反復である。気分障害ならばどのみちうつ病の時期があるに決まっている
のだ。誰かがうつ病症状を呈しているといったん知ったなら、うつ病症状を引き起こしている病
気は何であるかを突き止めるのが診断プロセスである。
—–ヒント—————-
過去の躁状態や軽躁状態が除外されない限りはうつ病患者は確定診断されない。「うつ病である
」
ということは診断的には無意味である。うつ病は診断名ではない。それは単なる症状の集まりで
ある。それは熱があるというのと似ている。妥当な診断は単極性うつ病または双極性うつ病で
ある。それに従って治療も異なる。
この診断プロセスには3つのステップがある。最初にうつ病症候群が原発性か続発性かを決める必
要がある。もし続発性ならば、まず一つには明確な原因があり、最も多いのは物質乱用である。
次に身体医学的病気があり、たとえば甲状腺機能低下症である。原因が明確にできなかった場合
には、そしてそのことが多いのだが、原発性うつ病と診断される。
——-図1.1 うつ病の鑑別診断—————————–
うつ病 続発性 原因明確(注1) 身体医学的
心理社会的
その他(注2)
原発性 原因不明確 単極性(注3) 反復性
非反復性
双極性
(注1)原因明確とは原因の確実なエビデンスがあること。そうではなく多分とか可能性としてと
いう場合は、きっかけに過ぎないかもしれないし、明確な原因とは言えない。(例えば、その原
因だけでその病気を引き起こすのに必要十分ならば原因明確である)
(注2)たとえば物質乱用。
(注3)図で分かるように、うつ病から、続発性うつ病を除外し、双極性を除外し、残ったものが
原発性単極性うつ病になる。原発性単極性うつ病には再発性と非再発性がある。
—–キーポイント———————–
強調したいのだが、身体医学的または心理社会的ないろいろな要因が原発性うつ病に伴って見ら
れることがしばしばであるが、その要因だけが原因であると明確に判定できない限り、続発性う
つ病とは診断しない。その要因は背景であり状況であり、きっかけである。
つ病とは診断しない。その要因は背景であり状況であり、きっかけである。
——-キーポイント———————-
たった一回でも躁状態または軽躁状態エピソードがあれば双極性である。たった一度の躁状態ま
たは軽躁状態を見逃さずに診断することが必要である。
原発性うつ病と診断したら、躁状態または軽躁状態エピソードの有無により、双極性と単極性を
鑑別する。
以上から、診断の手続きとしては、まず続発性うつ病を除外診断、次に双極性を除外診断、その
あとに残ったものが単極性うつ病と診断される。
困ったことに通常の診療では患者がうつ病だと感じて医院に行き、そこでうつ病と診断されて
いる。この場合のうつ病とは単極性うつ病を意味しているから、続発性うつ病と双極性うつ病に
ついては過小診断されている傾向にあると推定される。
1-4 気分障害の下位分類のさまざま
1-4-1 たくさんの下位分類のひとつ(表1.3)
—–表1.3 うつ病症候群の下位分類【双極と単極の両方を含んだ分類。双極・単極とは観点が
違う】—-
1.定型
2.非定型
3.精神病性
4.メランコリー型
1.定型うつ病の特徴は不眠、意欲低下、気分の日内変動。朝から夜になるにつれて悪化する。
2.非定型うつ病の特徴は過眠、食欲亢進、他人からの拒絶に過敏になる、気分反応性が保持されて
いる(短時間だけ気分が楽になる能力がある。)三環系抗うつ剤に反応しにくくMAOIsやSRIに反
応する。非定型うつ病は単極性よりは双極性の場合に多い。
気分の落ち込みや気力、集中力の低下など、うつ病に特有のブルーな気分はあるものの、楽しい
ことやいいことがあると、その気分が明るくなる。すなわち、出来事に反応して気分が変わる「
気分の反応性」がみられるのが特徴。
3.精神病性うつ病は標準的なうつ病の診断基準の他に妄想や幻覚が特徴である。また制止症状が重
篤であったり焦燥感や著しい罪悪感があることがある。精神病性うつ病は定型抗精神病薬よりは
非定型抗精神病薬によく反応し、抗精神病薬と抗うつ薬の投与を必要とすることが通常である。
うつ病成分が見逃されればシゾフレニーと診断される可能性があり、精神病性成分が見逃されれ
ばうつ病と診断される可能性がある。単極性よりも双極性で多い。
4.メランコリー型うつ病の特徴は定型的なうつ病の症状と顕著なアンヘドニア(無快楽症)であり
、気分の反応性が悪く、短時間でも気分が楽になることがない、定形うつ病とは逆の日内変動が
あり、朝にもっとも抑うつ的で夕方には次第に回復する。メランコリー型うつ病は定型うつ病よ
りは重篤型と考えられることが多い。三環系やSRIsによく反応するが入院が必要な事も多い。
—–ヒント——————-
25歳以下の若い精神病性うつ病患者の場合は双極性障害とよく似た症状を呈し、のちに明白な躁
状態になることがある。
【精神病性うつ病は双極スペクトラム障害に分類される。明白に躁状態を呈したら、双極Ⅰ型と
診断される。】
1-4-2 単極性うつ病の下位分類(表1.4)
—–表1.4 単極性うつ病の下位分類———
1.気分変調症
2.大うつ病性障害(反復性、単一エピソード、慢性)
1.気分変調症はマイルドなうつ病症状を呈し、DSM-IVの基準のうち少なくとも2つを満たし、しか
し4つ以上にはならない。生活時間の半分以上に抑うつ状態があり大人では少なくとも2年以上
続き、思春期では1年以上続く。その間、1ヶ月以上安定した正常気分が続くことはない。この定
義は実際はかなり厳密なものである。臨床場面で避けなければならないのは再発性の軽度のうつ
病症状を気分変調症と診断したり、大うつ病エピソードの中間地点の軽度うつ病症状を気分変調
症と診断したりすることである。純粋な気分変調症の場合には大うつ病障害は一度もあってはな
らない。しかし大うつ病症状が一度もない人はきわめてまれである。多くの場合は気分変調症の
上に再発性大うつ病が見られ、ダブルデプレッションと呼ぶ。
2.私がこの本の中で単極性うつ病と呼んでいるものはDSM-IVでいう大うつ病性障害である。躁状
態も軽躁状態もない大うつ病のことで、3つの下位分類を含んでいる。(1)単一エピソード。約
半数がこれである。(2)再発性(残りの半分)(3)慢性(エピソードが1年以上続くもの)。大
切なのは気分変調症と慢性単極性うつ病を区別することである。慢性うつ病では大うつ病の診断
基準が当てはまる(5つまたはそれ以上)が、気分変調症では当てはまらない。長く続いているか
らといってうつ病状態を気分変調症と診断するのはよくある間違いである。
1-4-3 双極性障害の下位分類(表1.5)
—–表1.5 双極性障害の下位分類———-
1.双極Ⅰ型 躁状態あり+うつ状態はあってもなくてもよい
2.双極Ⅱ型 軽躁状態+大うつ病
3.気分循環症 軽躁状態+2年以上の医療にかからない程度のうつ状態
4.純粋躁状態 多幸的またはいらいら気分
5.混合躁病 躁病エピソードのなかに抑うつ状態が同時に混合している躁病
6.急速循環型 1年に4回以上のエピソード
—–ヒント—————–
躁状態と軽躁状態の違いは、躁状態では顕著な社会的障害または職業的障害を伴う点。たとえば
、ばか騒ぎ、性的軽率、無謀な運転、衝動的な旅など。軽躁状態では見られない。
分類不能の双極性障害については論争があるが、潜在的に重要な診断である。非定型の双極性ス
ペクトラム障害をここに分類できるからである。つまり、これは双極Ⅰ型や双極Ⅱ型の古典的な
診断基準には当てはまらないが、大うつ病にも気分変調症にも当てはまらない。大うつ病エピソ
ードがあり、かつ双極性の性質を持つ人たちは、たとえば双極性障害の家族歴があったり、4日以
内の軽躁状態エピソードがあったり、抗うつ剤誘発性の躁状態・軽躁状態があったりする。表1.6
に双極性性質(Features of bipolarity)をあげておいた。第三章でさらに論じる。
—–表1.6 双極性性質——————————————–
・特徴的うつ病エピソード
・短期(3ヶ月以内の持続)
・再発性(5回以上のエピソード)
・非定型(特に25歳以下)
・精神病性(特に25歳以下)
・治療抵抗性(3つ以上抗うつ剤を使っても効果がない)
・抗うつ剤誘発性躁状態・軽躁状態
・双極Ⅰ型家族歴(物質乱用とシゾフレニーの可能性もあり)
・発揚性性格(エピソードとエピソードの中間時期)
ラピッド・サイクリング双極性障害は頻回の気分障害エピソードが見られ、1年に4回以上のエ
ピソードがあるものと定義される。これは経過診断であり、双極性障害の下位分類ではない。
1-5 うつ病と躁病を定義する
1-5-1 大うつ病を診断する
大うつ病エピソードの診断に当たっては、一日の大部分で抑うつ気分が持続すること(悲しい、
落ち込む、憂うつ)、それが最低2週間持続すること、8つの症状のうち4つが揃うことが必要で
ある。
人によってはアンヘドニア(つまり、ほとんど全ての活動に渡り興味が完全に失われること)が
一日の大部分、ほぼ毎日、最低二週間持続し、他の7つの症状のうち4つが揃うこと。
したがって、抑うつ気分それ自体のない大うつ病エピソードもあり得る。
大うつ病の症状はSIG E CAPSと覚える。エネルギーのカプセルを処方するという意味になる。
S sleep 睡眠が増減、ほとんど毎日
I interest 活動のほとんど全ての領域で興味喪失、ほとんど毎日、かつて楽しかったことが楽しめ
ない、ほとんど毎日【→興味と楽しみは普通つなげて考えている】
G guilty したこと、しなかったことに関しての過剰な罪悪感、または無価値の感覚(単なる自己
評価の低下ではない)、ほとんど毎日 【→罪悪感と無価値感はたとえて言えばマイナスとゼロ
みたいな感じ。プラスでないからここでまとめている】
E energy エネルギーの顕著な低下、ほとんど毎日【意欲と読み替えている】
C concentration 集中力減退。(躁状態で気が散るのとは別であるし、またシゾフレニーでも集
中困難は現れる、さらにADHDは注意集中そのものが病気の名前になっている。concentrationの障
害という一般的な言葉で鑑別はできないところがある。躁状態では転導性の亢進、うつ病では関
心の減退、シゾフレニーでは思考障害または感情平板化による興味減退、ADHDでは抑制系未発
達による転導性亢進)。
A appetite 食欲の増減、ほとんど毎日
P psychomotor change 精神運動変化。精神運動抑制は普段より運動や思考が遅くなること。精神
運動興奮は身体的落ち着きのなさとなる。
S suiside 自殺したいと思う考えがある。
これらの項目について、短期でもなく一時的でもないという意味で、顕著なとかとてもとかかな
りのとか、重篤な側面がある。これらは一日のほとんど、二週間以上の間大部分の日について当
てはまる。(自殺は例外で、短期間でもうつ病の診断基準となる)
—–ヒント—————————
自殺念慮は少しでもあれば異常である。見逃してはいけない。そして他のうつ病症状がないかど
うか入念に調べなければならない。
1-5-2 躁病を診断する
気分が上がるというのはどういう事かといえば、いらいらすること、多幸的になること、そして
躁病の主要な症状のうち診断基準を満たす数が揃っていること。
ノート:躁病はたんなるハイな気分ではない。多くの躁病の人は「ハイな気分とかハッピーな気分
」とかと報告するけれども、実際にはいらいら気分だけの躁病も多い。多幸気分だけで躁病と診
断は出来ないし、一方で多幸気分のない躁病もある。どちらの場合でも純粋躁病である。抑うつ
気分は躁病でも起こりうる。その場合、その他の診断項目に一致すれば混合性エピソードと診断
される。混合性躁病エピソードは純粋躁病エピソードと同じくらいの頻度である。
躁病エピソードの診断には、いらいら気分または多幸気分があり、躁病の7つの主要診断基準の
うち、一週間のうちに、いらいら気分の時は4つ、多幸気分の時は3つを満たすことが必要である
。加えて顕著な社会的・職業的機能障害を呈していることが必要である。
躁病の主要症状はDIGFASTと覚える。
D distractibility.気が散る。もっともよく見られ、もっとも主観的。注意集中が出来ない。しかし
うつ病のときの興味減退とは違う。
I insomnia 眠る必要がない。うつ病の場合は単に不眠である。鑑別するにはエネルギーレベルを
聞けばよい。躁病の睡眠障害は睡眠減少にもかかわらずエネルギーは高い。うつ病の不眠ではエ
ネルギーが低い。
G Grandiosity 誇大的
F Flight of ideas 思考奔逸。頭の中で同時にいろんな考えが競争する。
A activities ゴールを目指しての有効で役に立つ行動が増える。
(1)社会的—社交が増える。友人に電話する、普段以上に外出する。
(2)性的—性欲増加または過剰性欲。
(3)仕事—生産性が上がる。いつも以上に家の掃除をする。
(4)学校—いろいろな企画をする。いつも以上に勉強する。どの場合も、正常気分と比較する。
S speech 話し続ける。心理検査の時なども話し続ける。正常気分の時に比較してどうかを家族に
尋ねること。
T thoughtlessness 無思慮。正常判断によらずせき立てられるような行動。ゴールを目指すので
もなく有効でもない。よくあるのは4つの分野で(1)性的無分別。(2)無謀運転。(3)ばか騒ぎ。(4)急
な旅行。
—–ヒント——————
躁病のもっとも信頼できる有用な診断基準は睡眠の必要がなくなることである。面接の中でその
ような時期があることを確認し、その期間内に他の躁病症状がなかったか確認する。
すでに言及したように、躁病の診断基準としてあげられたものの他に、顕著な社会的・職業的機
能不全が必要である。これがないならば診断は軽躁状態である。また躁病の診断には最低1週間の
持続または入院が必要である。1週間以内で4日以上ならば診断は軽躁状態である。
—–キーポイント—————
軽躁状態の診断には顕著な社会的・職業的機能不全がないことが必要である。もしあれば診断は
躁病である。
—–ヒント———————-
定義から、入院は顕著な機能障害である。従って軽躁状態で入院するということはあり得ない。
—–ヒント———————-
性的無分別とかばか騒ぎとかのような古典的な症状にとらわれる必要はない。どんなものでも「
顕著な社会的・職業的機能不全」があれば十分である。
解説
ーーー【解説】
いやー、そんなこと言ってもね。
Sの場合には気分の変動が当然起きるでしょう。
不安性障害があれば当然抑うつ的になるわけだし。
たとえば虫歯があるだけでも憂うつなわけです。
もちろん、単なる失恋や虫歯で憂うつであることと、うつ病の違いが大切なわ
けですが。
気分障害の場合には他のどんな精神病性の症状も出ますというが、それは従来
はSがあればどんな症状も出る可能性があるので見逃さないようにしましょう
と考えていたところですね。
DSM時代はこういう時代なんだなあと思います。
この診断階層表はこれまではこんな風でした ブロイラーとかシュナイダーの流儀
1.身体因性精神症状(たとえば甲状腺機能亢進症、ステロイド剤副作用など。
脳腫瘍とか脳血管障害。最近はてんかんもここで鑑別。また発達の障害なども
この段階で除外診断。)
2.シゾフレニー
3.双極性障害
4.単極性うつ病
5.神経症性障害(いまやこの言葉も排除されているが)、対人恐怖、強迫性障害
6.その他、性格障害など
–
それぞれについて考えてみると
1.身体医学、DNA、薬物、食物その他を鑑別
2.現実把握をチェック
3.躁病、軽躁病をチェック
4.反応性のうつ病を除外
5.特徴的な症状のまとまりをチェック
気分障害の中には続発性うつ病とか二次性うつ病が入っているので
実質的には身体因性を最初の段階で鑑別していることになるし
精神病性うつ病という項目もあるので
実質的にはシゾフレニーも鑑別していることになるのだろう
さらには気分変調症もあるので以前の神経症性うつ病、抑うつ神経症も鑑別し
ていることになる
シゾフレニーと循環性障害はともに現在不明であるが脳のどこかに身体医学的
な意味で病変があると推定されているもの
シゾフレニーが慢性持続性不可逆性に崩壊性
循環性障害は可逆的で周期的
両者ともストレス脆弱性モデルで言えば
もともとの脆弱性がかなりの強さで用意されているものと見える
一方、ストレス要因が強いのはパニック障害や強迫性障害、社交不安障害など
で、環境を整えればかなり改善するのではないかと期待される。
ーーーーー
1.身体医学的除外診断。これは医師の大切な責任領域だろう。
2.シゾフレニーは本質がまだ分かっていない。しかし10年くらい精神科病院で
本気で仕事に取り組んでいれば、本には書いていないが、感得するところがあ
るのではないかと思う。(禅問答のようで私は嫌いだが、そして分かるなら書
けるし教えられるだろうと思うのだが、なかなかそうはいかないのだ。言葉と
か理性とか合理性を解体してしまう病気に対して、相変わらず言葉と理性と合
理性でどこまで理解できるのか。そもそもシゾフレニーを理解するということ
がまた原理的にどうなのか、など。)診断、理解、治療とも非常に進歩してい
るが、本質的な一歩はまだ印されていない。
3.躁うつ病、このあたりから、理由もなく自信満々なんだよねとか、理由もな
いのに悲しくて死にたくなるんだよねとか、なんとなく普通の言葉や感情や理
性の延長で表現できるものになってくる。しかしまたそこが落とし穴というも
ので、精神病性うつは了解を拒否しているのだし、それ以外の場合でも、了解
という方法の根本的な危うさがある。説明するという場合も、脳が脳を説明す
るということは依然として危ういことだろう。
ーーーーー
note 精神病性うつと神経症性うつと反応性うつの鑑別の問題
感情障害とか双極性障害とか躁うつ病と呼ぶ場合に
それならば精神病性ですね
と素直に解釈できるような意味の含みがあるわけです
ここで精神病性という言葉と
神経症性という言葉が対になるのですが
最近では
精神分析と共に神経症という言葉自体が駆逐されているので
説明が必要なのかなと思う
だいたいを言うと
精神病性という場合は
現実把握、reality testing、現実検討などと言われる
精神機能部分が壊れているわけです
神経症性というと
現実把握は壊れていないのですが
それを心の中でどう処理するかという段階になって
たいていは低級の防衛機制を使って
ごまかすわけで、
そのまあ、ごまかしともいうような部分を
神経症性と名付けているわけです
脳の構造を階層的に考えると
(だから診断学も階層的になるはずなのですが)
ジャクソニスムの原則に従って
大きく区分して精神病性と神経症性を区別できるというわけです
つまり精神病性のほうが重症だということになります
たとえばよく問題になる、失恋とか肉親の死亡などに伴う
悲哀と
うつ病の悲哀はどう違うのかというような問題がありますね
うつ病の悲哀にも2つあるわけです
上の考えに従うと
つまり
精神病性うつ病の悲哀と
神経症性うつ病の悲哀がある
何が違うかというと、
精神病性うつ病の場合は
現実把握がずれていて、そのせいで悲哀が発生している
たとえば妻が死んでもいないのに死んだと認知したら
悲しい
でも他人にはどうもよくわからない
そういう場合
神経症性うつ病
というのは
他の人と状況把握は共有できる、そして現実利益も共有できる
だから疾病利得とか
そんなことも共感できる
各種の防衛機制はその場その場に応じて
取り出したり引っ込めたりするものですから
原則共感できるものです
そして、普通ならこの防衛機制は使わないなというような場面で
その防衛機制を使ったりすると、
神経症性うつ病になったりする
失恋のうつは
現実把握も大丈夫、防衛機制もふつうのものを使っているという場合の
悲哀なんですね
これで
精神病性うつ病の悲哀と
神経症性うつ病の悲哀と
正常体験反応としての悲哀をきちんと区別できるはずです
ーーーーー
そういう意味では
私などは長年、患者さんの現実把握の程度を測定し続けているわけです
じっと話を聴き続けながら
そして一方で患者さんの使っている防衛機制を分析している
そういう仕事なんです
たとえばその人の把握している現実はどんなものか
こころのスクリーンに映るとして
内容そのものが現実と違っている場合から
画面の解像度がどうにも足りなくて
足りない部分を空想とか被害妄想で補うという場合も多い
その人の心のスクリーンに何が映っているのか
それはどの程度の解像度なのか
などに感心を持って話を聞いているわけです
ーーーーー
解像度と言いますが
実際には言葉に頼る部分が大きいんですね
子供ならプレイセラピーの中でその子供の心のスクリーンに何が映っているの
かを
考えるわけですが
大人の場合には
たいていは言葉
またたとえば集団場面、飲酒場面、セックス状況などがあるでしょう
たまには絵画とかを使うわけですが
やはり結局は言葉の網の目がどうかということに関心が向かうわけです
言葉の網の目が粗雑すぎると
何が映っているのか
現実と違うものが映っているのか
そんなことの判別も困難になります
言葉の網の目が粗雑すぎる人の場合には
やはりそのあたりの成長を促す方向で接することになるわけです
気の長い話になるでしょう
ーーーーー
ここまでがおさらいですね
薬剤としては
神経症性うつ病の場合には
抗精神病薬は使わなくていい
抗うつ薬でいい
精神病性うつ病の場合には抗うつ薬よりも
抗精神病薬ということになります
それは現実把握能力の改善ということが目標だからですね
ここでもう一度概念の点検をしてみると
双極性障害は、もともと感情を支配するシステムの障害で
原発性に感情が病気になっていると考えているわけですが
そうするとここまで説明してきたことと少しずれてくる
現実把握のズレがプライマリーな病変であって
その事に感情が反応するのはまた別の話
その感情反応の仕方がずれているというのは
また別の病気であって
それは双極性障害でもないし精神病でもない
類型として考えると
性格障害の方にやや近いだろうと思います
何も原因がないのに
感情が大きく揺れる
たとえば甲状腺機能障害とかではそんなことが起こりますが
それでも現実に対する反応が大きすぎるという感じであって
きっかけは確かにあって、そのうえで反応が大きすぎるという場合も多い
しかしそのような、何も原因がないのに感情だけが揺れている
というのが
双極性障害、感情障害、躁うつ病のもともとの分類でしょう
しかしそんなものがあるのか
あるとしてどう見分けたらいいのか
見分ける相手は何かというと
それは、ずれた現実に対する正しい感情反応ですね
正しい現実把握+ずれた感情反応=感情障害
ずれた現実把握+正しい感情反応=精神病
という区別になります
ところが先に述べたように
正確な意味での双極性障害は実は精神病性の性質を含んでいる
このあたりがなかなか厄介な部分です
再度、精神病性とは何かを考えなおすことになる
という訳で
少なからぬ循環の議論になる
こういう話は
机上の空論、スペキュレーションと言って
相手にしない人も多いわけでして
なかには、そのように区別するとして、どのように治療方針に反映するのか
方針が変わらないなら無意味だろうと
考える人もいます
ーーーーー
さて、実際には正しい現実把握といっても
問題山積です
たとえば大地震が起こったみたいだ、どうするかという場合、
正しい現実認識とは何でしょうか
難しい
そしてそれに対する正しい感情反応とは何でしょうか
それも難しい
理論的に正しいというものではなくて
統計的に多数であるとか中央値であるとか
そんなことで置き換えることもできるでしょう
ーーーーー
大災害の場合で言えば
たいていは、脳機能の最上位部分は機能停止しますので、
まあ、それが危機の意味ですね、逆に
そして大多数の場合に危機で脳最上位機能が麻痺しているときに
麻痺しないでクリアーな結論を出せる人が
リーダーとして適任ということになります
一番大声でしゃべっている人がリーダーというものではないんですね
ーーーーー
大災害に際しての人々の行動を見ていると
実に躁病的ですね
細かい説明は省きますが
精神科病院の病棟で日々起こっている患者さんの心の動きと
相似形なことが起こっているような気がする
この点から私は推理するのですが
大災害の時に人々の心のスクリーンに映るものと
躁病のときに患者さんの心のスクリーンに映るものはある程度似ているのでは
ないか
だからその先の感情反応に類似性があるのではないか
そう考えると
やはり躁病は大部分は精神病なんだと納得が行くわけです
しかし中には
現実認識はずれていない、しかし、感情はずれていると言う、本来の感情病の
人もいる
脳にはいろいろな部分があるわけだから
その部分部分で故障が起こっても不思議はないはず
だからこのような純粋原発性感情障害もあるでしょう
ーーーーー
というようなわけで、双極性障害は精神病の部分が大きいと考えられるわけで
す
根本の障害は現実認識の障害
だから治療法は抗精神病薬です
そんなわけで
ここからはテクニカルな話ですが
抗精神病薬に急性の躁病やうつ病を抑えるメカニズムがあるのかどうか
なかなか難しい
(わたしはあると思う・・・しかも現実把握改善部分以外の作用だと思う)
上記の話で言えば
抗精神病薬は現実把握を改善するから
躁病なりうつ病なりを改善すると
言えるのではないか
抗精神病薬が感情細胞に直接効いているのではない
と考えられます
(んー、でもそういう効き方もあるんだと思う)
また別の考えでは
やはり抗精神病薬は感情細胞に直接作用して
躁病をストップさせ、その延長でうつ病を誘発してしまう
そういう意見もあります
(そうだろうね、賛成)
また、精神病つまり統合失調症・シゾフレニーでうつ病症状は見られるのです
が、
それに対して抗うつ剤を使うのか
抗精神病薬を使うのかという問題はあります
(私は後者を使う)
ここでの話で言えば
現実検討がずれているなら抗精神病薬
現実検討が正しいままならば抗うつ薬という区別になるでしょう
ーーーー
いろいろと問題があるのですが
患者さんの心のスクリーンに映っているものは何か
それをきちんと把握しようとするだけで
いろいろなことが分かるはずなのだと思うわけです
ーーーーー
リチウムとかラミクタールがどう効いているのかはいろいろと議論がある
リチウムのばあいは急性躁病、急性うつ病、長期予防いずれにも有効
ラミクタールの場合には(メーカーはどう言うのか別にして)
急性うつ病、急性躁病には無効、長期予防に有効、となる
普通に考えて一番良いのは
急性躁病や急性うつ病で、認知機能に問題があるとしたら
そこを改善してくれれば理想的なのだけれども
機能をせき止めているもの、阻害しているものを取り除けることは
比較的しやすいけれども
不足しているもの、欠損しているものを薬剤で補うことは難しいだろう
しかも短時間ではなおさら無理だろう
欠損を補うのは教育である
ということは、急性の感情エピソードについてリチウム投与または抗精神病薬
投与は何が起こっているのだろうか
ということになる
たんなる鎮静であろうか
たとえば鎮静と考えるとして鎮静の典型的な薬剤はレボメブロマジンである
ところがこの同じ薬剤を少量のみ使って賦活作用を実現することができる
考えかたとしては、鎮静系を鎮静するから結果として脱抑制になるのであって
レボメブロマジン自身は一貫して抑制系である
ーーーーー
さらに長期予防のメカニズムは何か
などなど
ーーーーー
今現在大うつ病エピソードの1ヶ月目で
人生で3回目
なんていう場合
単極性うつ病の一部を見ている可能性と
双極性うつ病の一部を見ている可能性があるわけです
一番いいのは
たとえば過食、過眠、鉛管様麻痺とかというように現在ある症状を記載してい
けば
鑑別診断できるシステムですね
しかしそれは現在は難しい
それが原理的に可能なのかといえば
それも怪しい
しかし
例えばの話として
単極性うつ病の人の正常気分の時に話す時と
双極性障害の人の正常気分の時に話す時で
それぞれを鑑別できるかという問題とも言い換えられますね
うつ病の症状そのもので鑑別できないならば
その背景にあるものが問題ということになって
背景にあるものならば正常気分の時でも診断できそうではないですか
そうかな?
だから病前性格とかが研究されてきたのだけれども
最近は病前性格研究はネガティブな面が報告されていると思う
むしろ、本当は病前性格とは言えないものなのに
長い間病前性格と言われて尊重されてきたのはなぜかというような
ちょっと違う興味で眺められているようなところもある
病前性格と言えばいろいろ批判が出るというなら
ストレス脆弱性といえばいいのかもしれない
そしてそれは結局DNAの問題みたいなところがある
DNAの問題だと遺伝研究になるわけだけれども
単極性と双極性は確かに違う遺伝子群の影響かとの報告が多いと思うが
一方で
双極性は精神病と関わりがあって
統合失調症遺伝子群と明確に分離できるのかという問題が生じる
遺伝子から見れば精神病という大きなくくりが可能なだけではないかとの予測
である
それもそうかも知れないなあとは思う
ストレス脆弱性モデルで考えて
ストレス側に単極性うつ病が近くて
脆弱性側に双極性がありさらにそのもう少し外側に統合失調症がある
神経症性うつ病とか気分変調症とかは
微弱なストレスに対して慢性微弱抑うつで反応しているようで
たとえていえば
微弱ストレスに対して慢性微弱抑うつで反応しているのに
強力ストレスに対しては案外大うつ病で反応していないので
そこが妙なところだ
微弱ストレスに対して慢性微弱抑うつで反応しているのに
強力ストレスに対しては大うつ病で反応している場合は
ダブルデプレッションというのだが
その場合の大うつ病は、単極性うつ病のうつ病、双極性うつ病のうつ病と
現在症として区別できるかという問題でもある
それもやはりうつ病自体では鑑別は困難で
むしろうつ病成分を引き算して残ったものを比較したほうがいい
引き算して残ったものが気分変調症と正常気分の対比になる
いつでも経過が気になっているものだけれども
おかしいのは
今まで一度も躁病の経験はありませんという人が
たとえば19、21で大うつ病エピソードで21歳時点で診察を受けたとすれば
当然単極性うつ病となり
同じ人が23歳で躁病になると
双極性障害に診断変更になり薬剤も変わるという話であり
それはいくら何でもおかしいだろう
23歳から双極性障害が始まるのでもない
はじめから双極性障害なのだが
診断できなかった
あるいは、原理的に診断できない
診断学というものは、未だ発生していない躁病を見越して、予見する形で
診断をつけることではないか
たとえば顕微鏡で観察して未分化細胞があることとがん細胞になることは
同じではないのだが
しかしいろいろな状況と未分化細胞とを考えあわせれば
がん治療をスタートしても良いとは考えられないだろうか
あるいはがん細胞が確認できるまで待つのだろうか
細胞最初は全検査ではなくサンプル検査であるから
見逃しはあるはず
それを考えると当然、未分化細胞+状況で、充分な診断かもしれない
そういうものを「病名」と考えるのはやはり不合理だと思う
言えるのはエピソードだけなのだろう
遺伝歴とか経過とかを総合して
さらには伝統的には性格傾向とか人格の手触りとかも加味するのだが
それは言わないこととして
この例で言えば
21歳の時に診断するとして
ここまでうつ病エピソードしかないけれども
総合判断として双極性障害と思う
としたほうがいいものかどうか
どうすべきかを決めるための研究を進めたくて
そのためにDSMがあるのだけれど
なにかもうすでに結果みたいに扱われているのも
とてもおかしな話だと思う
経過の話で言うと
統合失調症の最初期症状として「うつ状態」があるわけだが
そのうつ病と上記種々のうつ病とを
区別できるのかという問題
現在症、生育歴、遺伝歴、性格、その他から総合判断して
区別すべきなのか、できるとすればどのようにして区別できるのか
区別すべきとすれば
もともと違う疾患であるという立場なのだろうが
何を持って違うといっているのか怪しいところはある
たとえば薬剤の相互乗り入れはますます激しい
双極性障害の時に使う気分安定薬として抗てんかん薬があり、リチウムがあ
り、
さらに定義にもよるが、場合によっては非定型抗精神病薬を含める
このあたりから見ると
非常な暴論としてではあるが
そして言葉の使い方として倒錯していると思うのだが
有効な薬剤という側面から見ると
抗うつ薬を使うべき単極性うつ病はいいとして
現在双極性障害と言われているものは
てんかん的側面と精神病性側面を持ち
主な症状はうつ病と躁病であるということになるのだろう
あまりにも暴論なので書くのもつらいが
例えばの話、症状としてうつ病と躁病を呈するてんかんと
言い切っても外れではないはずだし
症状としてうつ病と躁病を呈する精神病と言い切っても外れではないだろう
前者ならラモトリギンを使うし
後者ならアリピプラゾールを使うのですっきりしている
このようにしてみていくと
双極性障害の下位分類ができるはずである
ラモトリギンが効くもの、リチウムが効くもの、バルプロ酸が効くもの、それ
ぞれに特徴があるはずであり
さらに組み合わせるにあたっての特徴があるはずである
症状としてうつ病と躁病を呈するてんかん
とした場合、当然、脳波の話は出てくるだろうが
脳波は正常化されているのだと言えばいいのだろう
そしてそれでもてんかんだと言い張る
それは抗てんかん薬が効くからである
ーーーーー
双極性障害という疾病単位を認定しようとしているのだけれども
単極性うつ病と関係があるのかなと思うから
うつ病症状を見れば抗うつ薬を投与してしまいそれで治療が迷走するのだろう
うつ病と躁病を呈するてんかんですといえば
みんな素直にてんかんの薬を入れるだろう
またうつ病と躁病を呈する精神病と定義すれば
素直に非定型抗精神病薬を入れるだろうと思う
ただリチウムだけが特殊であるので
リチウムが効く病気として「双極リチウム病」としておいてもいいかもしれな
い
つまり、
双極てんかん
双極精神病
双極リチウム病
くらいに分類できるだろう
ここまで来れば診断も簡単になって
大うつ病エピソードで来院しましたという場合
単極性から双極性の可能性があるので
まずは抗うつ薬で様子を見る
そして躁転があったら双極と分かる
双極と分かったら、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬、リチウムに対する反応
を見る
それぞれに反応したものを
双極てんかん病、双極精神病、双極リチウム病と呼ぶ
簡単でよろしい
以上暴論でした
ーーーーー
双極性障害を富士山の7号目以上として6号目以下には双極スペクトラムがあり
富士山の隣にはもうひとつ山があって
単極性うつ病の山であり
裾野で緩やかにつながっている
その立体的な状況を考えて、どの部分を切り取ってどんな名前をつけて
どんな定義にするのかを考える
ーーーーー
Kraepelinの躁うつ病と現代の単極性障害・双極性障害がどう違うか理解する
にはまず第一に、躁うつ病をEugen Bleulerが感情障害と呼び変えたことを理
解しよう。第二に感情障害にはどのような下位分類があるかを見て診断基準を
検証しよう。
【理解しましたかね?】
ーーーーーーーーー【解説】
Kraepelinは自分の教科書の疾患分類をかなり頻回に変更していることで有名
である
そして未だにKraepelinなにを変えたのか発表して研究だと称している人間が
いる
わたしなどもクレペリンの原書を読んだことはないけれども
クレペリンが何をしたかについての論文は何度も目にしている
これが自然科学なのだろうか、いや、そんなはずはない
文献学である
ーーーーーーーーーーーーー
Kraepelinは躁うつ病は一つのものであるとした
Bleulerは二つものであるとした
現代のアキスカルの見解は、さらに複雑にスペクトラムを形成しているとして
いる
二つのものであるとする根拠は経過と遺伝歴である。
経過については反復の度合いということではなくて
病勢が悪化してそのあとで
欠損を残さずに回復するかどうかがSとの重要な鑑別点であったと私は理解し
ている
だから経過についての議論はここで言われている再発性の話が主眼ではないだ
ろうと思う
ーーーーーーーーーーー
いずれにしても単純なところでは共通で
双極性=うつ+躁
単極性=うつのみ
双極Ⅰ型=うつ+躁病
双極Ⅱ型=うつ+軽躁病
その先の見解が分かれていて
双極性と単極性はひとつの病気であるとする派と二つの病気であるとする派と
が大きく分けられる。
ーーーーーーーーーーー
双極Ⅰ型とSは遺伝的に関係があるだろうとかの説も根強い
このあたりから精神病は単一ではないかとの考えも古くからあり略して
Einheitなどと称される
現代の単一説は復刻版で大精神病学派である
ーーーーーーーーーーー
したがって、遺伝歴に関しても経過に関しても一致した見解があるわけではな
く
ここでの見解もおおかたの一致する見解ではない
ーーーーーーーーーーー
個人的にはわたしはDAM細胞説で
M cell が過剰に興奮していればそう状態、M cellが活動停止すればうつ状
態と考えているので
結局MDI単一説である
もともとM cellが少なくて脳神経の分布として目立たなければ熱中性もなく精
力性もなくそう状態にもならない
経過と遺伝歴からの単極性障害独立説については
それは反応性のうつ状態を指しているのではないかと疑っている
ーーーーー
クレペリンの元々の考え方は
精神の病気を経過で分類しようというものだ
たとえば頭痛を考えるとして、2ヶ月前から徐々に始まってだんだん悪くなっ
ていて、今もあるというタイプと
3日前の朝に突然始まって激烈、嘔吐も伴う
などという時間経過(temporal profile)が分かれば
脳血管障害、亜急性脳炎、脳腫瘍、変性疾患、偏頭痛などと病理で分類できる
これは『頭痛』という現在症状の切り口だけでは鑑別できないことから
経過を参考にしようという実に王道を行く考え方である
それはいいのだが経過の最終的な行方と病気との関係は
人生が終わってみないとわからないので
やはり問題は
現在の症状、またはこれまでの病歴から、長い経過を推定し、そこから病理の
性格を推定しようということになる。
症状では不充分なので経過を、経過を全部知るには一生かかるから、
やはりここしばらくの症状経過から全体経過を推定するしかない、というよう
に話が帰ってきてしまう
ーーーーーーー
【そう表現すれば簡単なようだけれども、実際にはそう簡単ではない。話者の
自己申告をどう解釈するかには議論の余地がある。そして、そうではなく、話
し方とか人格印象とか、診察室でのある程度客観的な要素が診断に役立つのだ
が、それを客観的に記述することもまた困難がある。】
【双極性を見逃すな!という話の一部なのでこういう流れになる。】
ーーーーー【解説】
うつ状態、うつ病、躁うつ病、単極性、双極性の言葉が微妙に入り乱れている
depression という言葉自体は 日本語のうつよりも一般的で日常語だと思う
停滞とか落ち込みとかの意味で使いやすいことも関係しているのだと思う
簡単なことを言っているのだから
もっと簡単に言えばいいのにと思う
要するに、現在の状態としてはうつ状態だけれども
経過を聞けば躁状態・軽躁状態があれば双極性とすべきで
それを見逃していませんかということだ
うつだけを反復している場合も
遺伝歴とか、その他ソフトな躁状態にも注意すると
双極性の要素があることが分かる
うつ状態を見落とすということはないのだから
躁状態を見落とすなということになる
でもそれは実はあまり簡単ではない
あなたは躁状態を経験したことがありますか
と聞けば終わるならそれで簡単だけれども
むしろ自己記入式の問診票の中に
過去の経験として躁状態の時期がなかったか
具体的に細かく聞いておくことが役に立つのだろう
ーーーーー
なにしろ
Major Depressive Disorder というので
大うつ病性障害 と翻訳しているのだが
なんとも気分がすぐれない
メジャー・リーグで大リーグだからマイナー・リーグで小リーグ
普通ならば「主要な」くらいに訳すのだろうけれども
この場合なんと訳していいのか
もともと Major Depressive Disorder という言い方が気持ち悪いのでなんと
もならない
ーーーーー
ーーー【解説】
なんかこう、ちんたら述べているうちに、用語がごちゃごちゃしてきている
あかんではないか
日本語できちんとしないといけないが
たぶん笠原木村の分類で臨床的には必要充分だろう
その日本語を使えばいいと思う
しかし学者はなにか新しいことを言わないといけないので
アキスカルの翻訳を始めるわけだ
なんかこう、敷地の境界線を少し動かしているような感じで
土地そのものは何も変わらないのだ
その事が大事という人もいるのだろうが
正直言って治ればいいのだが
しかしダマされないためにもリテラシーを確保しておく必要はあるわけだ
ーーーーー
定形うつ病で朝に良くて夜に悪い日内変動。
メランコリー型で朝に悪くて夜に良い日内変動。
と確かに書いてある。
ーーーーー
ーーーーー【解説】
言うことは勝手だからいいけれど
なんか説得力に乏しい感じはする
SIG E CAPSとカルテに項目を書いていた時期もあったけれど
あまり役に立たない感じだった
うつ病のチェックとしては【憂うつ気分+興味喜びの喪失】が二大項目
DSM-IV
抑うつ
興味・喜び
食欲
睡眠
不安・焦燥・制止
意欲
罪責・無価値
思考決断
自殺
ICD10
○大項目
・抑うつ気分
・興味と喜びの喪失
・易疲労感の増大と活動性の減少
○小項目
・ 集中力と注意力の減退
・ 自己評価と自信のなさ
・ 罪責感と無価値感
・ 将来に対する希望のない悲観的な見方
・ 自傷あるいは自殺の観念や行為
・ 睡眠障害
・ 食欲不振
psychomotor retardation とよく使うけれど
精神運動抑制(精神運動制止)
・考えがまとまらない
・アイデアが浮かばない
・何かをしようという気になれない(無気力)
・決断できない
・仕事や家事に集中できない(集中力低下)
・誰とも会いたくない
・出かける気になれない
・誰かと話すことが苦痛に感じる
・動くことがつらく感じる、家に閉じこもる、1日中寝ている
というようなもの
精神運動というのは、運動の中でも、意思の働きとは関係なしに起こるものも
あり、
たとえば舞踏病とかてんかん発作とかがそれに当たるが、
そういうものではなくて、
人間の意思の働きから発した運動のことを精神運動と呼ぶのだそうだ
そういう働きにブレーキがかかる様子を
精神運動制止、または精神運動抑制といい、単に制止と呼んだりもする
それくらいよく使う表現だし、よく見かける症状ということになる
しかしながら、意思の発動があり、そこから運動に至るまでの経路で、抑制が
あるというのなら、
ずいぶんいろいろな部分が関係しているはずで、
それは『意思発動』だけを指すのならば意思発動抑制といえばいいだけの話で
そうではなくてpsychomotorといっているのだから
もう少しそれなりの意味があるらしい
しかし翻訳して精神運動というとよく分からないものになる
motorは運動ではないですよね
心理的なモーターが動かないという感じですかね
いっそのことモーターという言葉をそのまま使った方が誤解が少ないような気
がする
でも心理モーターという実体があるわけでもないし
どうせたとえ話なんだし
ゆくゆく解体される運命にある言葉なのだろうと思う
ーーー
自殺念慮はそれだけで異常というのも文化とか宗教の違いなんでしょうかね
え。
心中を描いた西鶴とか立場ないですね
文化背景というものをやはり考えてしまうが
まあ、それ以上はいっても仕方ないですね、現時点では
ーーーーー
用語がごちゃごちゃしているのは
すっきりと単一の診断体系を使っていないからですよね
たとえば江戸時代の藩と明治の県を混ぜて使っているようなもので、
それぞれに便利な場面はあるんだけれども
初心者には混乱の元でしょう
とはいえ、これは書いている人や読者が混乱しているのではなくて
精神医学が混乱しているんです
ーーーーー
診断階層表ですが
これは「枝分かれ表」でもあるわけです
生育の途中で枝分かれして
それぞれの病気になるイメージがあるので
シゾフレニーとバイポーラーとどちらが
先ら枝分かれするのか考えて
それに応じて
先に枝分かれしたものが診断階層表では上位に来る
根っこから順に枝分かれするイメージ
するとこれは昔の精神分析なんですが
先にシゾフレニーが枝分かれして、その後でバイポーラーが枝分かれして
となっているので
しばらくそのままだった
シゾフレニーのほうがより身体的な感じがするしより重症な感じがするし
シゾフレニーになればバイポーラーの症状は全部出そうな気もする
と、昔は考えていた
いまは別な風に考えてはどうかという提案なので
なかなか新味がある
DSM-IVでは、統合失調症の診断の時に大うつ病、躁病、混合性エピソード、統
合失調感情障害は除外することとなっていて、
診断階層としては、これら感情障害が優先、そのあとで統合失調症というシス
テムになっている。
気分障害の項目では精神病性うつなどが『特定せよ』に分類されている。
また気分障害の中に緊張病が組み入れられていて、それも『特定せよ』に分類
されている。
カタトニーは昔はシゾフレニーの一つのタイプだったんですけどね。
ーーーーー
いろいろなうつがあって雑多でそれをどう整理するのかということは難しい問
題
私は普通は
正常うつ 会社で降格人事があったとか
反応性うつ 配偶者が死んだとか
神経症性うつ 不安性障害のことと言ってもいい
内因性単極性うつ 内部の原因で起こる単極性うつ きっヵけは外にあっても
真の原因は脳の内部
内因性双極うつ 同様に内因性で双極
精神病性うつ これは基本が精神病のもの
身体因性・続発性うつ
などに
分類して考えています
それで、精神病性うつが分かりやすいんですが
これは精神病に分類するのか
気分障害、うつ病、の中の精神病性うつと分類するのかというだけの問題です
ね
十和田湖を秋田県に入れるのか青森県に入れるのかとかそんな問題
ーーーーー
治療の計画からいっても、
単極性うつ病で1、2回目までのエピソードの人と
3回目からのエピソードの人は少し違うでしょう
1、2回目までは精神療法で充分
使うとしても睡眠を支える程度
3回目以上は薬剤必須で精神療法も可能なら加える
メランコリー型などはむしろ抗うつ薬と精神療法の両方が必須
ラピッド・サイクリングでは抗うつ薬は禁忌
なんて言う具合
単極性うつ病でも1、2回で一生を終わる人と
3回以上の人は遺伝子としても違うだろうと考えられます
ここで単極性うつ病も分解になる
それが今日は第一回の単極性うつ病エピソードで来院しました
という場合が難しいわけで
妥当性検証チェック項目にあるように
経過、遺伝、薬剤反応性などを参考にするのですが(あと、病前性格など)
やはり1、2回までは薬剤積極治療主義にはなれないでしよう
ーーーーー
気分変調症は大うつ病に届かないという意味で軽症なのだけれども
なにしろ2年とか続いてしまうのでその点では全く軽症ではない
ーーーーー
遺伝的な山で考えるといくつの山を考えたらいいのかな
バイポーラー山とその裾野であるバイポーラリティ
モノポーラー山(1-2回と3回以上は区別)
ディスチミア
リアクティブ
病気として区別されるということと
診断経過として区別されるということとを
別に考えないといけない
うつ傾向です
ということで大うつ病がないとしたら
ディスチミアになるかもしれない
しかしその後、大うつ病が見られるとダブルデプレッションで大うつ病
大うつ病が2年間慢性に続くと慢性
しかしその後躁病が明らかになると
双極性障害
さらにその後精神病が明らかになると統合失調感情障害
とかとか
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